ドウガネエンマムシ属

Genus Saprinus Erichson, 1855

 世界に約150種,日本からは4種が知られる(このほかにS. pecuinusの記録が鹿児島からあるが疑問).日本では他属に比べ大型種であるため,亜科内での区別は容易(海外ではハマベエンマムシ属ほどの小型種も多い).前胸腹板突起の側面に一対の穴を持たない.雄は中脛節内側に長毛を具える(交尾の際に雌の側部をなでるのに用いられる).獣糞,死体に普通に見られる.


1(4) 鞘翅の第1と第4背条の間は,粗く点刻される.

2(3) 尾節は全体に点刻され,縦中央の無点刻の帯は欠く.中胸腹板は粗く点刻される. .......... .......................................... コルリエンマムシ

3(2) 尾節は全体に点刻されるが,縦中央に無点刻の帯がある.中央腹板に粗点刻はない. .......... ............................................. ルリエンマムシ

4(1) 鞘翅の第1と第4背条の間の基半部は,平滑,あるいは軽く点刻されるにすぎない.

5(6) 鞘翅第3背条は短く,通常第2, 4背条の半分の長さしかない. ............... ドウガネエンマムシ

6(5) 鞘翅第3背条はほぼ第2, 4背条と同じ長さ. .. ................................. ニセドウガネエンマムシ


コルリエンマムシ (図5A, B)

Saprinus (Saprinus) cyaneus auricollis Marseul, 1855

 図説H: 223; hara, 1994: 226 [再記載,♂交尾器].

 体長4.95, 幅3.24.前胸背は紫がかった緑色,鞘翅は緑色の金属光沢を呈する.小型なこと,点刻と背条の形質状態から他種と区別できる.分布:小笠原諸島.フィリピン.ニューギニア.バリ,ブル島.Volcano Is.

ニセドウガネエンマムシ (図5E,F, 6A, B, C)

Saprinus (Saprinus) niponicus (Dahlgren, 1962)

 図説H: 223; hara, 1994: 229 [再記載,♂交尾器].

 体長雄4.05ミ5.71, 雌 4.52 -6.66, 幅雄 3.00-4.24, 雌 3.38-4.71.背面は茶色の光沢を呈する.次種にきわめてよく似る.2種は同所的におり,同定には細心の注意が必要である.交尾器による同定が確実(図5).動物の腐肉,人糞,犬糞によく集まる.分布:北海道,本州,四国,九州.韓国.沿海州.

ドウガネエンマムシ (図5G,6D, E, F)

Saprinus (Saprinus) planiusculus Motschulsky, 1849

 Saprinus cuspidatus: 図説N: 67. ......... Saprinus planiusculus: 図説H: 223; hara, 1994: 232 [再記載,♂交尾器].

 体長雄 3.95-5.66, 雌 4.09-6.33, 幅雄 3.14-4.19, 雌 3.28-4.57.Dahlgren (1962)が再検討するまでは,前種と本種は「ドウガネエンマムシ」として混同されていた.前種とは「鞘翅第3背条が短い」ことで区別できるが,変異もあり,不確実な場合は交尾器による確認が必要である(図5).動物の腐肉,人糞,犬糞によく集まる.分布:北海道,本州,四国,九州.旧北区北部.ヨーロッパ.中国.韓国.カナリー諸島.アリゾナ諸島.北アフリカ.小アジア.ベトナム?.

ルリエンマムシ (図1,5C, D)

Saprinus (Saprinus) splendens (Paykull, 1811)

 図説N: 67; 図説H: 224; hara, 1994: 236 [再記載,♂交尾器].

 体長雄 5.50 -6.85, 雌 6.14-7.66, 幅雄 3.36-4.76, 雌 4.33-5.24.ルリ色をした普通種のためなじみ深いエンマムシである.その色から,日本産の他種と間違うことはないであろう.望月(1985)などに生活史が報告されている.分布:北海道,本州,四国,九州,南西諸島.韓国.アフリカ熱帯部.アラビア.カシミール.アフガニスタン.東洋区.オーストラリア.


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